第31回ニッポンクラウドワーキンググループ会合報告
「クラウドビジネスとIoTの可能性」をテーマに第31回ニッポンクラウドワーキンググループ会合を開催いたしました。
今回の会合はさくらインターネット株式会社さんに会場をご提供いただき、多くの方々にご参加いただき活気ある会合になりました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございます。
【日時】2015年7月17日(金)17:00~19:00
【場所】さくらインターネット株式会社 セミナールーム
【参加者】メンバー、協賛各社および関係者の方々を含めて40名
1.開催のご挨拶
副会長 藤田浩之
本日会場をご提供くださいましたさくらインターネットさん、ありがとうございます。さくらインターネットさんでの開催は2回目ということになります。今回もさくらインターネットさんから色々な情報を持ち帰っていただき、クラウドビジネスに役立てていただきたいと思います。
本日の会合テーマですが、「クラウドビジネスとIoTの可能性」です。IoTという言葉はいたるところで聞くようになって、ある種バズワードになっていると思いますが、今後、直接的あるいは間接的にクラウドビジネスにかかわることも増えてくるかと思います。
そのような中で、IoTという言葉自体は知っていても、その本質については実際のところよくわかっていないということが多いと思います。本日はそのあたりをゲスト講演、そしてディスカッションにて深掘りして、「クラウドビジネスとIoTの可能性」を一緒に考えていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
2.大阪会合ご報告
実行委員 大澤 武史
6月に大阪会合を開催いたしました。
参加人数が70名ということで規模の大きな会となりました。
会合後の懇親会でも50名を超える方に参加いただき、盛況の内に開催することができました。
大阪会合の詳細はこちらの報告ページをご覧ください。
3.新規メンバー紹介
中央システム株式会社
第29回会合にゲストとして参加し、今回入会いたしました。
受託開発メインの会社ですが、4年前からクラウドとスマートデバイスを利用した、自社ブランド製品「スマートワークス」を5製品ほど提供しています。マンパワーやコスト面でITの恩恵を受けられないような仕事をされている方を助けるツールとして位置付けています。
また、IoTやクラウドを利用して、アマゾンで行われているような商品のピッキングシステムを小さな倉庫会社でも利用できるようなシステムを作りたいと本気で考えています。
よろしくお願いいたします。
4.部会報告
皆様こんにちは。
7月15日CBAさんと共同のイベントを開催いたしました。
技術的な部分を掘り下げたイベントで、有意義なポイントがあったので共有させていただきます。
サムライクラウド部会では、シングルサインオンの仕組みで利用されているSAMLというプロトコルと、ガジェットで利用されるOpenSocialと呼ばれるプロトコルを使うというのがサムライクラウドのコア技術で、CBAさんとは連携の部会を月に1回開催しています。その中でSAMLを普及させていくということと、もう少し濃いディスカッションをするイベントを実施いようということで、7月15日、六本木ヒルズで開催いたしました。
イベントでは、アプリケーションがSAMLに対応することがすごく大変だという偏った考えが流布しているので、SAML対応は簡単だよというお話をさせていただきました。
また、セキュリティ面でもシングルサインオン配下で保護されるので、強化されるということについてもお話させていただきました。
サムライクラウド部会の活動として、SAMLの啓蒙活動についてはCBAさんと共同でワークショップ、またはセミナーという形で継続的に実施していきます。
また、クラウドアプリケーションデスクトップというSAMLとOpenSocialの仕組みを内包した形でアプリケーション開発を簡単にするということ、そしてAPIの研究として、セキュアな使い方およびアプリケーションでの使い方について研究していきたいと思います。
次回は7月27日(水)に連携部会を開催いたします。
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クラウドアプリケーション部会
部会長 前本 知志(代理 野元 恒志)
昨年末からアイディアソン、ハッカソンを実施しており、マッシュアップアワードに出品することを目的で、Ingressを利用した位置情報マッシュアップアプリケーションを作っていこうということが検討されています。
前回の勉強会はMongoDB(NonSQL)の実践を実施し、次回はクラウドをコアにしたアプリケーションの開発を進めるということで、RESTのAPIを実装していく方向です。
次回の部会では初の試みとしてGoogle Hungoutを利用してオンラインの部会を開催する予定です。
ご興味があれば是非ご参加ください。
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クラウドビジネス推進部会
部会長 藤田 浩之
クラウドビジネス推進部会として、部会を4月、5月、6月と連続で開催しました。
4月はCECさんにて開催し、『クラウドビジネスを成功に導くための「座談会」』として、各社がクラウドビジネスに対して実際にどのように取り込んでいるのかについて話し合いました。
5月はさくらインターネットさんにて開催し、いつものように参加者からクラウドの事例紹介を実施し、また、「さくらのクラウド」の検証報告についても実施しました。
直近の6月はクラウドサービス部会と共同開催ということで、クラウドビジネス推進部会としてはクックパッド社の開発者ブログの情報を元に、同社がどのようにビジネスに取り組んでいるのかを深掘りして見ていきました。同ブログは主に開発者視点ではありますが非常に有用な情報が満載で、ビジネスへの取り組みが見えてくるものでした。部会で取り上げた内容以外もためになるかと思いますので一読することをお勧めします。
次回部会開催は9月を予定しております。
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クラウドサービス部会
部会長 小堀 吉伸
NCWG内での4部会のポジショニングとしては、サムライクラウド部会およびクラウドアプリケーション部会は技術の視点で、もともとNCWGは技術視点の団体ですが、それだけでなくビジネス要素もということで進めており、クラウドビジネス推進部会がビジネスと機能の視点、クラウドサービス部会がビジネスとサービスの視点ということで、4部会やっています。
是非ともみなさんどこかの部会に加わっていただければと思います。
クラウドサービス部会は、サービスの視点でクラウド見るということで、前回の部会は演習ということでクックパッドのビジネスモデルを紐解きながらビジネスの有効性を見ていき、また逆にサービスのダメな部分について見ていくこともやっていきたいと思っています。
クラウドサービス部会としてクラウドの定義をしており、クラウドは立ち位置によって解釈が色々ありますが、部会では『インターネットを介して利用する無形の経済的な価値提供機能』として提唱しています。
クラウドサービス部会ではセオドア・レベットのホールプロダクトという概念を参考に、独自の概念として、コアプロダクトを中心に補完プロダクトが周りを補完していくというモデルで、サービスの場合はNCWGでの連携のように周りの補完サービス自体が連携していくというようなモデルを考案しています。
今回のクラウドサービス部会は、クラウドビジネス推進部会と共同で、10人ぐらいでクリエイトラボさんの会議室にて開催しました。サービス部会ではワークショップとしてクックパッド社のWBSで紹介された動画をみた後、チームに分かれてブレインストーミング的にクックパッド社のサービスの有効性についてディスカッションしました。
次回部会は9月前半を予定しています。
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5.ゲスト講演「世界から見た日本のIoT戦略における期待」
Planetway Corporation CEO & Founder 平尾 憲映 氏
本日は、IoTの本質とは何なのか、世界からみた日本のIoTの戦略がどれぐらい期待されているのかということを経験上からお話させていただきます。
2020年には1千億個のモノがインターネットにつながると予測されています。
また、市場規模は民間のみで631兆円、官民含むと1900兆円規模になるといわれています。
IoTの市場には大きく分けて4つの分野があります。
1.人(より関連性と価値を持った人への接続)
2.モノ(物理的なデバイスやモノへ相互接続しより高度な意識決定を実現)
3.プロセス(最適な情報を最適な人やモノへ最適なタイミングで提供)
4.データの解析(データ利用に付加価値を見出す)
上記4つの分野で根本的にビジネスになるのはデータ解析の部分であると思います。
そのため、クラウドビジネスとの連携が必要不可欠と考えています。
IoTはサプライチェーンや物流分野で革新をもたらすといわれていますが、BtoB分野だけでなく、個人的にはBtoBtoC分野でも活用し、コンシューマーにIoTが実現する社会の利便性について気づかせていくことが必要だと考えています。
世界からみてIoTに関して注目されている国は、ドイツ、日本、米国、韓国、ブラジルで
日本は2位にいます。この中でずば抜けているのはドイツで、民間だけでなく国を挙げての
取り組みが実施されていることが理由に挙げられます。
今後のIoTの普及について、センサーは2020年までに2220億個がインターネットに繋がると言われており、一か月あたりのデータトラフィックが18エクサバイト発生すると予測されています。このデータにどのぐらいの付加価値を持たせられるかというのがIoTの本質だと思っています。
IoTのエコシステムを創出するには1社の力では不可能。強固なアライアンス体制が必要不可欠。現在世界でクローズドに企業連合軍が形づくられてきており、IoTに関する連合軍どうしの戦いが始まっています。
IoTを実現する上で必要となるものとして、サイバー・フィジカル・システムズ(CPS)と言われるものが挙げられます。これは実世界の状況をセンサー等によりリアルタイムに把握し、サイバー空間で因果関係や相関関係等のデータ分析を行い、そのフィードバックにより、実世界にある社会システムの課題を解決し新たな価値を創造するという仕組みです。
IoTの注目の理由と歴史について見てみますと、1832年にElectromagnetic Telegraphが開発されてから200年ほどたっていますが、IoTは新しい言葉でもなんでもなく、200年前から元々夢描かれていたことが、最近になってようやく実現できるようになってきたということです。
IoTを実現するための課題としては、「セキュリティ」が挙げられます。
情報漏えい等の対策は必須で。デバイスの乗っ取りによる情報漏えいや、不正なコントロール、管理外デバイスからの攻撃などから守る必要があります。
IoT社会を実現する上でのポイントをまとめると下記7項目があげられます。
1.コネクテビティ(何で繋ぐか)が重要
2.大きく分けて、2種類のIoT
3.セキュリティの担保が必要
4.複雑なエコシステムの最適化が必要
5.民間だけでなく、官との連携が必須
6.技術革新先行型でなく、既存の技術を事業転換
7.既存のインフラが整っている事が重要
中でも一番重要なものが「複雑なエコシステムの最適化」で、日本がIoT分野で世界にリードできるポイントになると思います。
Q.IoTは「データ分析」分野に一番市場性があると言われましたが、データを持っていてもマネタイズできていない会社が多いかと思いますが、どのようにするべきですか?
A.データを集めることが必要不可欠。自社独自のデータを集めるのがファーストステップ。そこからデータとの相関関係を見つけ出す必要があると思っています。
※発表の動画および資料についてはこちらのサイトからご覧いただけます。
6.ディスカッション「クラウドビジネスとIoTの可能性」
モデレーター 会長 小堀 吉伸
パネリスト サムライクラウド部会部会長 野元 恒志
クラウドビジネス推進部会部会長 藤田 浩之
Planetway Corporation CEO & Founder 平尾 憲映
・クラウドの視点からIoTのビジネスへの有効性とは?
藤田:インフラ視点でIoTビジネスを考えると、10年前、15年前に実現できたのかといえば、おそらく実現はできたと思います。ただしコストがものすごくかかったと思います。今はクラウドのインフラというものが柔軟に利用できるようになり、誰でも実現できるようになってきた。それによりスピーディーに色々なことが試せるようになってきたということが凄く重要だと思います。IoTのビジネスは全員が成功するわけではなく、競争していいサービスが残っていくと思います。IoTでのクラウドの有効な利用方法としてはデータを解析するという部分、また、そのデータをクラウドにため込んで活用するという部分、最後にデバイスが相互にコミュニケーションするというインフラとしてもクラウドが有効だと思います。
ニッコム小島さん:モノ(Things)からのデータを集めるところが重要、貯めないとビジネスに転嫁できないと考えています。個人的にはNCWGがIoTからのデータを蓄積するインフラを用意して、関係者が共有で活用できるような環境を整えるとよいと思っています。
・セキュリティの面から、現実化したIoTのリスクってどうなの?
野元:IoTがある時点で、個人データは筒抜けになることは必須だと思います。IoTのリスクとしてはデバイスが乗っ取られるということの方がリスクとしては重要だと思います。通信を暗号化することは当たり前で、さらに端末にセキュリティホールが生まれないような規定が必要になってくると思います。
平尾さん:セキュリティの問題は全体の仕組みを作る段階で定義する必要があると思います。ただし、それを規定したとしても完璧なものは作れないです。そのため、モノが出た後でもセキュリティの戦いは続き、またそれがIoTのビジネスの市場を広げることに繋がると思いますので、好意的に受け止めています。
小堀:IoTやクラウドを一見ビジネスに役立ちそうなお題目で終わらせないというのがNCWGで考えていることなので、IoT、クラウド含めてNCWGのニュートラルな立ち位置だからこそできることがありますので、引き続き会の活動をやっていきます。是非とも加わっていただいて、楽しく意義のある会にしていきたいと思います。
7.さくらインターネット株式会社からのご紹介
「さくらのクラウド アップデートと今後のロードマップ」
クラウド開発室 横田真俊 氏
さくらクラウドの特徴は下記の通りです。
・ブラウザだけで「仮想データセンター」を操作
ブラウザから、サーバ・スイッチなど「仮想データセンター」を操作
・圧倒的なコストパフォーマンス
他社同等プランより、性能差4~9倍。料金は半額以下
・料金プランは1つ、自動的に最安値にセット
利用開始から20日未満は日割り、20日の時点で月額料金が適用されます
直近で追加した機能は下記の通りです。
・Windows VDIサービス提供開始
・アーカイブのゾーン間コピー機能提供開始
・スタートアップスクリプト機能
・ブートデバイス順序指定タグ
・ルータ+スイッチのIPv6対応(β)
・準仮想化ネットワークドライバ対応
・パケットフィルタ機能強化
・スタートアップスクリプト
・IPv6 DNS逆引き機能
・ロードバランサハイスペックプラン
・SSD(250GB、500GB、1TB)追加
・CoreOS対応
・VPCルータ
・テストゾーンの追加
・2段階認証
直近のバージョンアップについては下記の通りです。
・東京リージョンの提供
サーバー数は全94種類を用意
・石狩、東京リージョン間の接続が可能に
・2段階認証にてセキュリティを強化
今後のロードマップについては下記を予定しております。
・GSLBの提供
・詳細なユーザ権限機能の提供
・新コントロールパネルの提供
Q.リージョン間の接続ができるようになるとのことですが、特別な申込みが必要でしょうか?
A.さくらのクラウドのみの場合はブリッジというサービスで、コントロールパネルからお申込みいただけます。ただし、他のサービスと繋ぐ場合は書面での申込みが必要となります。
※発表資料はこちら
「東京都クラウド助成金のご紹介」
営業本部 営業1部 矢澤 正人 氏
本日は東京都のクラウドへの支援事業についてご説明します。
昨年度は経産省にてクラウド助成金という制度を実施しましたが、本年度は東京都が主導で支援事業を実施するということで、みなさんがエンドユーザー様にクラウドを提案する際のひとつの話の切掛けとしていただければよいなと思っております。
本制度は地球温暖化防止対策の一環として、オンプレミス環境をエネルギー効率の高いデータセンターなどに移設することで二酸化炭素削減につながり温暖化対策になるというものです。
今回は日本データセンター協会と東京都が環境に優しいデータセンターを定義して、その認定を受けたデータセンターにサーバーを預けていただくことによって支援が受けられるという取り組みとなります。
事業年度としては、平成27年~28年、事業規模6.75億円、東京都に中小企業事業者を所有または使用する中小企業者が対象となります。
移行作業費、物品、サービス費が助成対象です。
さくらインターネットではクラウドおよび専用サーバーへの移行が助成の対象となります。
前年度の課題として電源使用率の測定というものが挙げられますが、こちらについては現在策定中とのこと。
Q.現在認定外のクラウドを使っていて、認定クラウドに移行した場合に助成対象になりますか?
A.現在まだ未確定です。
7.総括(概要のみ掲載)
会長 小堀 吉伸
本日会場をご提供いただきましたさくらインターネットさん、ありがとうございました。二年連続でこの会場で会合をやらせていただいているので、大変ありがたいです。是非来年もよろしくお願いいたします。
ご講演いただいた、平尾さんありがとうございました。IoTを基軸にした会社を起業されたということで、是非今後の展開の中でNCWGにも加わっていただけたら嬉しいです。
早速ですが、今年度の会の活動柱として、4部会で活動しております。是非とも皆様に加わっていただければと思います。
従来通り、NCWGは基本的にクローズド団体として活動を実施しておりますが、周年イベントや大阪開催での会合については、広く活動を知ってもらう意味もありオープン参加での開催も行っています。
会の振る舞い方としては、あくまでも会としては“場”を作っていきながら、その場を活用するのは皆さんで、もちろん、「こういうことをやりたいのでNCWGで後押しして欲しい」などの相談があれば可能な範囲で支援させていただきますが、NCWGが主体となっての顧客集客的な活動は行っていません。
会の現状としては、メンバー80社、ご協賛20社の計100社で、400人以上の方々がニッポンクラウドワーキンググループに関わっています。
このような方々で会が構成されることで、ベンダーニュートラルな立ち位置で振る舞えることができ、この立ち位置だからこそ「やれること」や、さらに「やらなければならないこと」があると設立以来考え続けています。
引き続き、新規に加わりたいと言われる方がいらっしゃれば、是非、ご紹介いただき一緒に活動を行ってゆきたいと思います。
また、会の設立以来、「サムライクラウド」は、ID、UI、データ連携といった“三位一体連携”といった切り口でスタートし現在も変わりません。
さらに、この四年間に会の活動を行ってきて「サムライクラウド」と言う表現が、「日本から発信するクラウドビジネスモデル」という意味を持たせたことで、海外からも「サムライクラウド」=「日本のクラウドビジネス」と思ってもらえるような活動をしていきたいと強く考えています。「サムライクラウド」という表現が、技術的な意味合いと、ビジネスモデルも意味合いの二義性を持たせて活動を行っております。
また今年度のテーマである「Beyond The Clouds」は、例えば、クラウドサービスをある種のツールと捉えれば、顧客の求めていることを実現するために、向うにあるもの(目的)を掴んでしまえば手前にあるツールのクラウドは自然と使われるという考えで、このテーマを今年度は掲げています。引き続き、このテーマを御旗に活動を行っていきますので、よろしくお願いいたします。
本日はお疲れ様でした。
8.懇親会
懇親会についても大いに盛り上がり、メンバー・ご協賛の方々との積極的な交流を図ることができました。
【NCWG実行委員 報告書作成者】
三上 智親 (株式会社エイチ・ピー・エス)
渡邉 寛和 (和丘株式会社)
藤田 浩之 (株式会社オレガ)