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NCWG年度報告会、設立14周年講演会、パーティ兼忘年会 開催報告

おかげさまで、ニッポンクラウドワーキンググループは14周年を迎えることができました。
日頃の活動をご支援いただいているご協賛・メンバー・サムライクラウドサポーターの方々に心より感謝申し上げます。

14期の活動報告および15期の活動計画の報告会、設立14周年講演会、パーティ兼忘年会を2025年12月3日にリアルとオンラインのハイブリッドにて開催しましたのでご報告いたします。
当日は多くの方にお集まりいただき、ありがとうございました。

日 時:2025年12月3日(水)16:00~
場 所:関東ITソフトウェア健康保険組合 市ヶ谷健保会館 F会議室
    東京都新宿区市谷仲之町4-39
    および、オンライン(Zoom)

■年度報告会
1.第14期活動報告会及び第15期の活動計画報告会

会長 小堀 吉伸

・NCWGの歩みと活動概要

NCWGは11月1日から15年目に入りました。
設立当初は「ニフティクラウドワーキンググループ」としてスタートしましたが、1年後に中立性を保つため、支援を受けて「ニッポンクラウドワーキンググループ」に移行しました。略称のNCWGは設立当初から変わらず使用されています。
NCWGは、参加者がアクティブに活動することに重点を置いており、単に企業数を増やすことは必要としていません。
第14期(前期)の構成は、メンバー83社、サムライクラウドサポーター6名、ご協賛19社でした。

・活動スローガンと目的

活動スローガンは「Beyond the Clouds!」(クラウドの向こう側にあるものを掴め)で、クラウドをツールとして捉え、その先にある目的を見据えるという考えは、第14期から第15期にかけても変わらないグランドセオリーとして掲げられています。
第15期のスローガンにはさらに「Advance the Samurai Cloud」が追加されました。
活動目的は、クラウドサービスの提供能力と利活用能力の両側から見て、弁証法的なアプローチによってクラウドケイパビリティ向上させ、クラウドビジネスの質を高めることです。
クラウドサービスの定義について、NCWGでは「インターネットを介して利用する経済的な価値提供機能」であると定めており、この定義は15年間使用されています。

・第14期の主な活動実績(2024年11月~2025年10月)

会合開催
第76回から第80回まで、計5回開催されました。
第76回ではランサムウェアに関する話が、第77回ではクラウド人材(ヒューマンリソース)に関するパネルディスカッション風の議論が行われました。
第78回はサムライクラウド部会の発表、第79回はクラウドビジネス推進部会の発表でした。
第80回は大阪会合として開催され、AIやロボット制御に関する実ビジネスの話が取り上げられました。

協賛支援セミナー/視察活動
セミナーは2回実施され、さくらインターネットさん(ガバメントクラウドについて)とリンクさん(DMARCについて)に実施いただきました。
長年の念願であったさくらインターネットの石狩データセンターへの施設見学(視察活動)が実現しました。

部会:
現在、サムライクラウド部会(技術/機能/サービス)とクラウドビジネス推進部会(ビジネス/サービス/機能/技術)の2部会体制で活動しています。

実行委員:
12社1OB、合計18名の方々が第14期の実行委員として活動しました。実行委員およびその所属会社に対し、時間や懇親会の費用負担を含めた貢献に感謝が述べられました。

・第15期活動計画(2026年度)

体制の継続:
会長は2026年度も継続して務めます。副会長、幹事、部会長の体制も基本的に変更はありません。

活動方針の継承:
情報や意見交換ができる場を提供し、クラウドビジネスでの協業を生み出すことが継続されます。
うまくいった事例だけでなく、うまくいかなかった事例(バッドプラクティス)も共有することで、参加者全体のメリットにつなげたいと考えています。

人材育成:
CHR(クラウドヒューマンリソース)という略称を念頭に置き、クラウドケイパビリティ獲得の機会を提供し、人材育成に注力します。

イベント計画:
年に6回以上の会合およびセミナー開催を目指し、東京以外(大阪など)での開催も継続して目指します。

部会の見直し:
現在2部会ですが、将来的に新たな部会(例:宇宙クラウドサービス部会)の復活も検討されます。

会員種別の追加:
第15期から、従来の5区分に加え、一般会員という6番目の区分が追加されました。
一般会員となるには、正会員2名以上およびメンバー会員1名の推薦が必要となるなど、高いハードルが設定されています。


2.部会活動報告及び活動計画
  サムライクラウド部会 部会長 野元 恒志

活動の基軸:
NCWG設立以来、Single Sign-On (SSO)、ID、データ連携、およびアプリケーションの横串接続(Samurai Open Social)を核として活動しています。

第14期活動実績:
ほぼ月1回のペースで計11回実施しました。第78回NCWG会合にてゼロトラストを視点とした部会発表を実施。10月には神戸でも部会を開催しました。
主なテーマ:ゼロトラスト(セキュリティ周り)、生成AI(Generative AI)、エッジクラウドなど、多種多様な技術論を深掘りしました。
議論内容はかなりディープであるとの言及がありました。

第15期活動計画:
基本スタンスであるID連携(SSO)の継続と、「ゼロトラスト標準化」を強く推進します。
ゼロトラストの観点から、VPNは廃止すべきであるという議論が継続的に出ています。
生成AIの最新動向を把握し、MCP(モデルコンテキストプロトコル)連携などを活用したインテグレーションや追加学習の方法を議論します。
部会では異なる会社だからこそできる激論が交わされており、クラウドケイパビリティ向上にチャレンジしたい新しいメンバーを歓迎しています。

 クラウドビジネス推進部会 部会長 藤田 浩之

活動指針:
NCWGがメンバー相互の交流の機会を積極的に提供する。
誰もが気軽に参加できる場(クラウドビジネスサロン)を作るとともに、クラウドビジネスについての知の共有により、各社のクラウドビジネスを活発化させる。
クラウドの様々な利活用方法を取り上げ、各社のクラウドケイパビリティの向上とクラウド人材の育成に繋げる。

第14期活動実績:
クラウドビジネスサロンを計7回開催しました(飲食しながら気軽に語れる場)。
テーマは主に生成AIとMCP(モデルコンテキストプロトコル)で、オンライン中心でしたが、最後の開催はハイブリッド開催となりました。
第79回会合にて「生成AIでクラウドケイパビリティを伸ばし、サムライクラウドを実現する!」というテーマで部会発表を行いました。

第15期活動計画:
活動指針に「将来のクラウドビジネスに有用な『道具』の積極的な利活用方法を探求し、各社のクラウドケイパビリティの向上とクラウド人材の育成に繋げる」という項目を追加しました。
これは、道具を使いこなすことが目的達成に重要であるという考えに基づいています。
第15期は引き続きサロン形式で生成AIをテーマに活動します。
ハイブリッド開催の比率を増やし、リアルで集まって意見を出し合う機会を増やす予定です(1月はアルティネット社、5月はドヴァ社で開催予定です)。


3.事務局からの報告 事務局 尾鷲 彰一

役割:
会の様々な活動を円滑に行えるよう、活動の支援を行っています。
会合/セミナーの準備、実行委員会の開催準備(日程調整、資料作成)、参加/退会窓口、他団体からの講演依頼対応などを行います。

情報発信:
メンバーや協賛企業、サポーターの情報が掲載されたパンフレットやホームページ(ncwg.jp)を管理し、会合レポートも掲載しています。

活動のサイクル(スパイラルアップ):
事務局は、実行委員やメンバーが会合を通じて得た経験やアイデアを基に、次の実行委員会でテーマを議論するという、スパイラルアップのサイクルが活動を豊かにしていると実感しています。

事務局所在地:
神奈川県横浜市神奈川区(オープンウェブ内)にあります。


4.実行委員報告(実行委員 内田 龍<株式会社ブライエ>)

活動内容

イベント準備:
2ヶ月に1回程度の頻度でオンラインミーティングを実施し、テーマの検討や役割分担の調整を行います。

イベント当日:
会場設営/現状復帰、受付業務、入館証の管理(セキュリティ維持のため)、質疑の取りまとめ、および会合後のレポート作成(ncwg.jpに掲載)を行います。

第14期テーマの多様性:
ランサムウェア、人材育成、ゼロトラスト、AI、MCP、ロボティクスとAIなど、年間を通して非常にバラエティに富んだ切り口で活動が行われたことを振り返りました。

所感:
実行委員として活動を始めた当初は上司に言われて参加していたが、今では「何か面白いことがありそう」という気持ちで参加するようになり、この気持ちを共有できる場を提供し続けたいと考えています。

要望:
参加者に対して、今後のテーマの提案や、実行委員としての参加を呼びかけました。実行委員は会の方向性の舵取りに直接関われる機会となることが言及されました。

2026年度のスローガンは下記の通りです。

 Beyond the Clouds!
    and
 Advance the “SAMURAI CLOUD”.(「サムライクラウド」を積極的に進歩させる)
  
  『クラウドケイパビリティを重ね合わせ、クラウドビジネスの可能性を拓く!』

■設立14周年講演会

 講演会では、『AI社会を支えるクラウド、データセンターの未来像』と題し、
 NTTドコモビジネス株式会社 イノベーションセンター IOWN推進室・技術戦略部門(兼務)、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 客員研究員、NCWGサムライクラウドサポーターの林さんにご講演いただきました。

1. 概要

「AI社会を支えるクラウド、データセンターの未来像」

林 雅之 氏(NTTドコモビジネス株式会社 イノベーションセンター IOWN推進室/国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 客員研究員/NCWGサムライクラウドサポーター)

2. 背景・目的

2-1. 社会・技術背景

  • 2009年前後から始まったクラウドブームは一度成熟期を迎えたが、近年の生成AI(LLM等)の台頭により再び大きな転換点にある。
  • 生成AIの学習・推論には膨大な計算資源と電力が必要であり、それを支えるクラウドインフラとデータセンター、ネットワーク構造の再設計が喫緊の課題となっている。
  • 同時に、電力制約・環境負荷・経済安全保障など、インフラを取り巻く制約条件も厳しさを増している。

2-2. 講演の目的

講演は、以下の3つの観点から、AI時代のインフラの将来像を描くことを目的としていた。

  1. クラウド市場の変遷と、AI時代における現在位置
  2. AIデータセンターと「Watt×Bit(ワット・ビット)連携」による電力・情報インフラの最適化
  3. IOWN構想・光コンピューティングおよび光量子コンピュータによる次世代インフラの可能性

<第1部クラウドの市場環境―過去も振り返りながら>

3. クラウド市場の変遷と生成AIによる再加速

3-1. クラウドの10年と成熟

  • 2009〜2012年前後にかけて「クラウド」がバズワード化し、期待が急速に高まった。
  • 2011年にはAWS東京リージョンが開設され、東日本大震災を契機にBCPの観点からクラウド利用が一気に進展した。
  • 以降、クラウドファースト、クラウドネイティブ、マイクロサービス、DXなどの概念が順次普及し、政府も「クラウド・バイ・デフォルト」を掲げるなど、クラウドはインフラとして定着した。

3-2. 生成AI時代の新たなハイプサイクル

  • Gartnerのハイプサイクルでは、クラウドIaaSは「生産の安定期」に位置付けられる一方、生成AIを契機に「クラウド+AI」が新たなハイプサイクルとして浮上している。
  • 2024〜2025年にかけて、「LLM」「AIエージェント」「AIネットワーキング」「ハイパーAIスーパーコンピュータ」「AIオーケストレーション」「QCaaS」等が注目されており、クラウドとAIが不可分のエコシステムとして捉えられつつある。

3-3. ハイパースケーラーとネオクラウドの台頭

  • AWS、Azure、Google Cloudの3社で世界のクラウドIaaSの約2/3を占める寡占構造が形成されている。
  • これに加え、GPUに特化した「ネオクラウド」(GPU as a Service、生成AI向けクラウド)が年平均69%という高成長を遂げている。
  • 生成AIの学習・推論需要により、一度成熟したと見なされていたクラウド市場の成長率が再び加速している。

4. 生成AIがもたらす計算需要とデータセンターへの影響

4-1. 学習から推論、そしてAIエージェントへ

  • 従来、計算・電力負荷の中心はLLMの「学習」であったが、今後は「推論」が主役となる見込みである。
  • 2029年には、AI計算需要の約65%以上を推論が占めると予測されている。
  • 今後の方向性として、「AIエージェント」が注目されている。
  • 人間からの単発指示への応答に加え、AI同士が常時連携・対話しながらタスクを遂行するモデルが登場。
  • 24時間高頻度に推論が走り続けるため、電力・トラフィックともに常時高負荷となる可能性がある。

4-2. 計算量・電力需要の爆発

  • 一部の試算では、2040年の日本の総計算量は2020年比で最大10万倍に達する可能性があるとされる。
  • 大規模LLM1モデルの学習に、原子力発電所1基分に相当する電力が必要、といった指摘もあり、今後は電力インフラが根本的な制約条件となる。

4-3. 日本のデータセンター市場と投資

  • AIシステム市場は2020年の約1.3兆円から、2030年代にかけて数兆円規模へ拡大する見込み。
  • データセンターサービス市場も2020年の約5兆円から年平均13%以上で成長すると予測される。
  • データセンター建設投資は2024年時点で約4,300億円、今後1兆円規模へ拡大する可能性がある。
  • データセンター電力容量についても、数千MWから4,500MW規模へと拡大が見込まれている。

5. 日本のデータセンター立地と分散の課題

5-1. 東京・大阪への過度集中

  • 日本国内のデータセンター立地の約84%が関東(東京圏)と関西(大阪圏)に集中している。
  • 千葉県印西市はハイパースケールDCの一大集積地であり、電力供給や送電網の逼迫が顕著である。
  • 首都直下地震等の災害リスクや、電力・土地・水資源の制約を考慮すると、地方分散が急務である。

5-2. 政府による分散促進策

  • 「デジタルインフラ強靱化」事業をはじめ、政府は補助金等を通じて地方へのDC分散を支援している。
  • 海底ケーブル陸揚げ局を苫小牧(北海道)、糸島(福岡)に新設し、東京へのトラフィック集中を緩和しつつ地方DCを接続する構想が進行している。
  • 北海道・東北・九州など、再エネポテンシャルの大きい地域を中心に、分散型DCの整備が検討されている。

5-3. 海外との比較:アッシュバーン(米バージニア州)

  • 米国バージニア州アッシュバーン周辺は世界最大級のデータセンター集積地であり、多数の事業者が集積し、ダークファイバー等も含めた高度なネットワークインフラが整っている。
  • 東京は世界的にも主要拠点であるものの、アッシュバーン級の集積と比較すると規模はまだ小さい。
  • 日本では「地方分散」と「一定規模の集積地」の両立をいかに設計するかが大きな課題である。

第2部AIデータセンターとワット・ビット連携

6. AIデータセンターの大型化とコンテナDCの活用

6-1. AIデータセンターの電力規模

  • 従来型データセンター:一般企業向けの「リテールDC」は比較的電力規模が小さい。
  • ハイパースケールDC:25〜50MW規模の大電力を消費。
  • AI特化DC:100MW超が一般的になりつつあり、海外では1,000MW級を志向する構想もある。
  • 国内においても、苫小牧(ソフトバンク)、石狩(さくらインターネット)、栃木(NTT)などで大規模AI DC構想が進んでいる。

6-2. コンテナ型データセンター

  • 大型DC建設には数年単位の期間を要する一方、AI需要の伸びは急速であり、ギャップを埋める手段として「コンテナDC」が注目されている。

<特徴>

  • 40ftコンテナ等にサーバー・GPU群を収容し、必要な場所に迅速に設置可能。
  • 建設・撤去が容易であり、GPUの陳腐化に合わせて「箱ごと更新」しやすい。
  • さくらインターネット(石狩)、Getworks(新潟)等が実際に活用している。
  • 戦略的には、大型AI DCとコンテナDCを併用する「二段構え」の構成が現実的と考えられる。

7. 世界的なAI/DC投資ブームと内在するリスク

7-1. 多層寡占と経済安全保障

  • 半導体(NVIDIA等)、EDA・製造装置、クラウド/DC(ハイパースケーラー)といった各層で、少数プレイヤーによる寡占が進行している。
  • NVIDIAのCUDAエコシステムへの依存度が高まり、新規参入者や国産系プレイヤーがGPUおよびそのエコシステムにアクセスしにくい状況が生じている。
  • 経済安全保障の観点から、特定国・特定ベンダへの過度な依存は大きなリスクとなる。

7-2. データセンターバブルの懸念

  • GAFA等の大手IT企業が世界のDC建設投資の大部分を占めており、「DC建設バブル」とも評される状況にある。
  • 課題として、
    • 電力制約・水資源不足
    • 気候変動による熱波・森林火災リスク
    • 変圧器等の設備不足、火災リスク
    • 環境規制・脱炭素規制の強化
    • 将来的な需要減少による過剰投資リスク
      が指摘されている。

7-3. AIビジネスの収益構造の脆弱性

  • 主要IT企業のAI関連投資は年間数千億ドル規模に達する一方、生成AIサービスの直接収入は数百億ドル規模にとどまるとの分析もある。
  • 高価なGPUは陳腐化が早く、設備投資の回収が難しい。
  • GPUメーカー(NVIDIA等)は利益を上げている一方で、クラウド事業者の投資回収は不透明であり、「投資先行・収益後追い」の構図が続いている。
  • また、モデル性能競争(例:OpenAIとGoogle Gemini等)により、市場シェアの急変リスクも高い。

8. Watt×Bit(ワットビット)連携と地方分散の構想

8-1. Watt×Bitの基本概念

  • Watt×Bit連携とは、Watt(電力)とBit(情報)を一体で最適化しようとする国の構想である。
  • 従来は、発電所から都市部まで長距離送電を行い、その先にデータセンターを配置していた。
  • Watt×Bitでは、
    • 電源立地(再エネ含む)の近傍にDCを置き、
    • オールフォトニックネットワーク(APN)等で全国と接続することで、
    • 「電力を運ぶ」から「データを光で運ぶ」へと発想を転換し、エネルギー効率の改善を目指す。

8-2. 政策枠組みと実証方針

  • 総務省と経産省が共同で「Watt×Bit連携官民懇談会」を設置し、2024年に報告書1.0を公表。

<主な検討事項>

  • DCの地方分散と再エネ立地への誘導
  • DC間接続(APN)とワークロードシフト技術
  • ギガワット級DC集積地(苫小牧等)の検討
  • 海底ケーブル陸揚げ局の整備支援

<実証イメージ>

  • 複数の地方DCをAPNで接続し、あたかも1つのハイパースケールDCのように利用する。
    • 再エネ発電量・電力料金・気象条件に応じて、DC間でワークロードを動的に移動させる。
    • 通信経路(光波長)の切替と連動した高度な制御を行う。

8-3. Watt×Bit実現に向けた現実的課題

<自治体>

  • DC誘致の意欲は高いが、データセンター事業に関する知見や担当人材が不足している。
    • 住民・議会との合意形成、インフラ整備の負担も大きい。

<DC事業者>

  • 特に外資系ハイパースケーラーにとって、地方分散は経済合理性に乏しい。
    • 空港・人材・調達網・電力が揃う都市近郊(印西等)に集約した方が効率的。

<電力会社>

  • 特定DC向けに大規模投資を行っても、需要変動により回収不能となるリスクがある。
    • 投資コストの電気料金への転嫁には社会的な制約がある。

<通信事業者>

  • APNを新規地方DCに敷設するための土木・設備投資負担が大きい。
  • 既存エッジ拠点(MEC等)で対応できるケースも多く、インセンティブ設計が必要。

第3部IOWNとIOWN光コンピューティング

9. IOWN構想と光コンピューティング

9-1. IOWNの概要

  • IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、光技術を中核に据えてネットワーク・コンピューティング・デバイスを再設計する次世代情報通信インフラ構想である。

<背景>

  • データトラフィックと計算需要が指数関数的に増大する一方で、電力制約が顕在化している。
  • 従来の電気配線中心のアーキテクチャでは、消費電力・発熱が限界に近づいている。

<目的>

  • 光伝送による大容量・低遅延・超省電力なネットワークの実現。
  • ボード間・チップ間・パッケージ内接続の光化によるコンピューティングの省電力化・高密度化。

9-2. IOWN Global Forumとロードマップ

  • IOWN Global Forum(IGF)には、Google、Microsoft、NVIDIA、KDDI、楽天モバイル、トヨタ等、約175組織が参加し、ネットワーク・DC・デバイス・ユースケースの標準化を議論している。

<ロードマップ>

  • IOWN 1.0:オールフォトニックネットワーク(APN)等、ネットワークの光化。
    • IOWN 2.0:ボード間接続の光化(光エンジン等によるスイッチ・サーバ内部の光接続)。
    • IOWN 3.0:チップ間接続の光化。
    • IOWN 4.0:パッケージ内接続の光化。
    • 時期感として、IOWN 2.0は2025年前後に商用化が始まり、3.0は2028年、4.0は2032年以降を想定している。

9-3. IOWN 2.0:光エンジンによるスイッチの光化

  • 従来のスイッチは、ASICからフロントの光モジュールまでを電気配線で接続しており、電力効率が低かった。
  • IOWN 2.0では、小型光電融合デバイス「光エンジン」をASIC近傍に実装し、ボードレベルでの光接続を実現する。

<主な効果>

  • 配線の大部分を光に置き換えることで、スイッチの消費電力を約半減。
  • 128ポート級の大規模スイッチを従来よりも小型な筐体で実現可能。
  • 開発体制:Broadcom(LSI)、Accton(筐体設計)、新光電機工業(モジュール組み立て)、NTTイノベイティブデバイス(光エンジン)など、複数企業が協業。
  • 同様の光電融合技術はNVIDIA等も開発しており、世界的な競争環境の中でIOWN技術のポジショニングが問われている。

10. データセントリック/ディスアグリゲートコンピューティングとWatt×Bit

10-1. 従来アーキテクチャの課題

  • 従来サーバーは、CPU、メモリ、ストレージ、GPU等を1筐体に固定的に収容していた。
  • その結果、リソースの利用率にムラが生じ、GPUやメモリが使い切れないまま余るなど、非効率が発生していた。

10-2. IOWN光コンピューティングによる新しい構成

  • GPU、SmartNIC等のハードウェアを「リソースプール」として分離し、光接続によって高速・低遅延に接続する構成を実現する。
  • サーバー構成をソフトウェア的に「合成(コンポーズ)」するディスアグリゲートコンピューティング/データセントリックインフラを目指している。

<主な特徴>

  • リソースの一元管理と柔軟な割り当て。
  • 負荷に応じたスケールアウト/インによる電力削減。
  • 複数筐体・複数拠点にまたがる論理システム構成。
  • ダイナミックハードウェアリソースコントローラによる自動制御
    (故障時の自動切替等を含む)。

10-3. Watt×Bitとの連動

  • PCIeの光化とAPNを組み合わせることで、地理的に離れたデータセンター間をあたかも1つのクラスタとして扱うことが可能になる。
  • これにより、都市部高コストDCから、土地・電力コストの低い地方DCへのワークロード移動、再エネ利用率の高いDCへのジョブ移管が容易となる。
  • IOWN光コンピューティングは、「分散DC+Watt×Bit」実現のための基盤技術として位置付けられる。

11. 光量子コンピュータとの統合ビジョン

11-1. NTTの光量子コンピュータ構想

  • NTTは、IOWNと連携した「光量子コンピュータ」の研究開発を進めている。

<特徴>

  • 光を用いることで、極低温等が不要な常温・常圧動作を目指す。
  • 既存の光通信技術・光デバイス技術を流用しやすい。
  • 波長多重によりスケーラブルな量子ビット拡張が可能。

<ロードマップ>

  • 2027年に1万量子ビット級、2030年に100万量子ビット級を目指す。
    • データセンターのラックに収容できる形態を想定している。

11-2. 光+量子の統合ネットワーク

将来的なビジョンとして>

  • APNで接続された複数のデータセンターに光量子コンピュータを配置し、量子中継技術(量子リピータ)を組み合わせることで、「光+量子」が統合された広域コンピューティングネットワークを構築する構想がある。
  • 現時点では長期的かつ挑戦的な目標であるが、IOWN 4.0の先にあるロードマップとして議論されている。

第4部今後の展望

12. まとめと今後の展望

12-1. 講演の要点整理

  1. クラウドの再定義
    • クラウドは一度成熟段階に入ったが、生成AIの登場により再度急成長フェーズに入っている。
    • 今後は「クラウド+AI」を一体のエコシステムとして捉える必要がある。
  2. AI需要とインフラ制約
    • 学習から推論、AIエージェントへと計算需要がシフトし、計算量・電力需要は爆発的に増大する。
    • 電力・環境・立地・経済性を含む多面的な制約の中で、インフラを再構築することが求められる。
  3. DC集中と分散の両立
    • 東京・大阪への過度集中はBCP・電力の両面でリスクが高い。
    • 地方分散を進める一方で、一定規模の集積による効率性も維持する設計が必要である。
  4. Watt×BitとIOWNによる新アーキテクチャ
    • 電源近接型DC+APNによる「Watt×Bit連携」は、脱炭素と効率化の両立を目指す国家的プロジェクトである。
    • IOWNの光コンピューティングは、その実現を下支えする基盤技術となり得る。
  5. 国産インフラと経済安全保障
    • 半導体・クラウド・AI基盤の多層で海外依存が進む中、国産・国内コンソーシアムによるインフラ構築が重要。
    • 光電融合・光量子コンピュータを含むIOWN技術を活用した「国産クラウド基盤」の構築が長期的な戦略目標とされている。

12-2. 今後の検討課題・示唆

<政策面>

  • Watt×Bit連携を実現するための、自治体・DC事業者・電力会社・通信事業者間のインセンティブ設計。
    • 土地利用規制・環境規制・エネルギー政策と整合したDC立地戦略の策定。

<技術・産業面>

  • IOWN 2.0以降の光電融合技術を、実際のDC・クラウドサービスにどう組み込むか。
    • 分散DC間を仮想的に統合するためのオーケストレーション技術、AIワークロードの動的配置技術の確立。
    • 光量子コンピュータを含む次世代計算資源を、既存クラウドと統合するためのアーキテクチャ検討。

<経営・戦略面>

  • AI/DC投資バブルと指摘される状況の中で、投資回収可能なビジネスモデルの構築。
    • 海外ハイパースケーラーとの競合・協調を踏まえた、日本発のクラウド/AI基盤のポジショニング。

■閉会のご挨拶
 副会長 野元 恒志

光電融合という概念が、ボード間だけでなくスマートフォン等のデバイス内部にも広がっていく未来像に技術が「じわじわと」現実世界に入り込んでくる感覚を共有でき、強い希望を持てるお話を頂きました。林さんありがとうございます。

2025年度の活動も興味深い意味での面白さを重視して取り組んできました。理事・実行委員・会員・協賛企業が一体となり、興味深いテーマに取り組んできました。

2025年度は特に「目に見える面白い動き」が多く、変化の大きい一年だったと思います。

<生成AIを中心とした技術動向>

  • 生成AIの進展に伴い、データセンター・GPU等のインフラ領域にも大きな動きが発生。
    • 量子コンピューティングなど、関連領域も含めて技術テーマが広がり、抱えきれないほどのトピックが出てきている。

<大阪会合でのVLA(Visual Language Action Model)の紹介>

  • 大阪・グランフロントでの会合にて、XNOVA服部さんからVLAの講演があった。
    • VLAは、テキスト生成型AIとは異なり、機械制御で用いられる強化学習モデル。
    • 一つのアクション命令で複数のサーボモーターを同時制御するなど、物理世界の動きに直結。

<従来の機械制御・第2次AIブームとの対比>

  • 従来の産業ロボット制御は、ルールベース・条件分岐・上から順番の制御

(エキスパートシステム的発想)。

  • 現在の生成AIやVLAは、その延長ではなく、新しいアプローチで実世界を扱いつつある。
    • AIがデジタル空間を超え、リアル世界へ本格的に押し寄せてくる転換点という実感。

<変化はリスクではなく「チャンス」>

  • 今後数年、特にこの2年ほどで状況が急激に変化しており、プレイヤーにとって大きなチャンスの時期。
    • 参加者はすでにその重要性を理解している前提だが、改めて「その波をどうつかむか」が問われている。

<ニッポンクラウドワーキンググループの価値>

  • 社内だけでは得られない「社外の人と切磋琢磨する場」が用意されている点が大きな価値。
    • 自らゼロから場を作らなくても、会合・部会という枠組みの中で、自然に機会をつかめる。
  • すでに今期第1回理事会で、来年度の計画が検討されている。

<「参加者」ではなく「参画者」>

  • 小堀会長のメッセージを受け、受け身の「参加」ではなく主体的な「参画」を重ねて要請。
    • 「参画者になってください」というお願いというより、
      「ここで参画しないのは正直もったいない/残念」との強いスタンスを表明。
    • 得られる結果は、グループではなく、自分自身の動き方にかかっていると強調。

2026年度も面白い年度にしていきますので、是非参画者として、主体的に関わってください。ニッポンクラウドワーキンググループという場を最大限活用してほしいというのが率直な思いです。

■設立14周年パーティ兼忘年会

 パーティでは、ご協賛の皆さんや関係団体の皆さんからご挨拶をいただきました。
 さらに忘年会では、大抽選会に多数の豪華プレゼントをご提供いただき、
 おかげさまで忘年会を大いに盛り上げることができました。

メンバー、ご協賛企業様、関係団体様、そして一般参加者の方々含め、
多数の皆さんにお集まりいただき、本年を締めくくるにふさわしい
大変意義深いイベントとなりました。

改めまして、ご協力いただきました皆さん、ご参加いただきました皆さんに
厚く御礼申し上げます。

今後ともニッポンクラウドワーキンググループをよろしくお願いいたします。

NCWG実行委員会 一同

【NCWG実行委員 報告書作成者】
井口 和彦(株式会社ドヴァ)
吉見 孝信(株式会社レイコム)


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カテゴリー: Generalサムライクラウド部会(オンライン)

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