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NCWG年度報告会、設立13周年特別講演会、パーティ兼忘年会 開催報告

この度ニッポンクラウドワーキンググループは13周年を迎えることができました。
日頃の活動をご支援いただいてるご協賛・メンバー・サムライクラウドサポーターの方々にも感謝申し上げます。

13期の活動報告および14期の活動計画の報告会、設立13周年特別講演会、パーティ兼忘年会を2024年12月3日にリアルとオンラインのハイブリットで開催しましたのでご報告いたします。
当日は多くの方にお集まりいただき、ありがとうございました。

【司会進行】 大澤 武史

【第13期活動報告会及び第14期活動計画報告会】

会長 小堀吉伸

小堀会長から、2024年度の活動と2025年度の活動計画の報告をいただきました。

最初に会の設立にかかわるお話をされました。

ニッポンクラウドワーキンググループは、2011年11月1日に設立し活動を開始しました。
 その1年前の2010年11月1日より「ニフティクラウドワーキンググループ」として1年間活動した後、よりニュートラルな立ち位置の会としてニッポンクラウドワーキンググループとして活動開始することとなりました。
 ニュートラルな立ち位置だから出来ること、さらにニュートラルな立ち位置だからこそやらなければならないことなど、日本のクラウドビジネスのパイを少しでも広げることをミッションとして会がスタートしましたが、13年経って「クラウド」が道具として、またモノゴトを表現するときの「意味」としても普通に使われるようになっていることを十分認識しながら、引き続き「クラウド」の活動を行ってゆきます。

以下、箇条書きにて概要のみを記します。

・2024年11月時点でのNCWGの構成は、メンバー86社、協賛企業20社、サポーター7人で、200名程度が会の活動に関わっている。

・2024年度のスローガン「Beyond the Clouds 24!『クラウドケイパビリティを高め、次のクラウドビジネスをつかむ!』」と活動方針、そして主な活動について説明されました。

続いて、2025年度のスローガン「Beyond the Clouds!『クラウドケイパビリティを伸ばし、クラウドビジネスの質を高める!』」と活動方針、そして主な活動計画について説明されました。

・「Beyond the Clouds!」については、「クラウド」は、あくまでも道具なので、その道具を使って成すべきことをきちんと捉えれば、道具のクラウドは自然と使われるとの意味合いから、クラウドを超えてということで、「Beyond the Clouds」をスローガンにしているとのことです。

・そして会に参加するだけでなく、参加するからには、一緒に企画から関わってほしいとのことで、「参加者から参画者へ」と呼びかけられ、参画者として会の活動に関わっていただくことで、自社の強みを表出していただき、他の参画者との交流を通して、相乗的なクラウドビジネスの価値を創りだすことができると説明されました。

また、活動の推進力となっている実行委員の皆さん及び所属されている会社の方々に対して、イベントごとに作成される報告書作成への感謝とお礼を述べられていました。

・2025年度の活動の「域」としては、AIが主戦場となりますが、さらに量子コンピュータなどの量子分野や宇宙ビジネスなども活動領域に入れているとのことです。

最後に2025年も、面白いけど、有意義でクラウドビジネスに有効な活動を行ってゆく話されて報告会の話を終わられました。

【部会活動報告及び活動計画】

サムライクラウド部会(部会長 野元恒志)


IDとAPIとアプリケーションを連携の主な議題として取り上げて来ました。ゼロトラスト上でのセキュリティに関する議論を行っています。

2024年度の活動報告
ゼロトラストを中心として各種議論、成果発表を行いました。
2025年度の活動計画
ゼロトラストを中心とした議論をしつつ生成AIに関して、RAGを用いた生成AI技術のビジネスへの取り組みなど最新技術動向も取り込んでいきます。

クラウドアプリケーション部会(部会長 尾鷲彰一)

2024年度の活動報告
6月までは画像生成AIや、動画生成AI、音楽生成AIなどのAIサービスを調査してきましたが、、7月以降はシステム開発に有用なAIを取り上げてきました。
2025年度の活動計画
AIサービスは刻一刻と進歩しているため、AIサービス一覧の見直し、サー追加、修正を行います。
引き続き、業務に役立つAIサービスを取り上げていきます。

クラウドビジネス推進部会(部会長 藤田浩之)


皆さんが気軽に参加して「クラウドビジネス」について知識を共有する場として、お酒などを飲みながら「テーマ」に沿って語り合う「クラウドビジネスサロン」を開催しています。

2024年度活動報告
 取り上げたテーマとしては、ノーコードの活用と最新生成AIの活用を取り上げてきました。
2025年度活動計画
 テーマは引き続き「生成AIのクラウドビジネスへの活用」とします。
 クラウドケイパビリティの向上とクラウド人材の育成を目的に、今期は参加メンバーの皆さんからも積極的に発表する機会を作ろうと思います。

実行委員会に参加して(実行委員大澤)


今日の会場の大久保の健保会館はNCWGにとっての聖地です。
実行委員会は何をしているのかについて説明します。
月に1回程度の実行委員会では、理事会で話し合われた内容を共有していただき、実行委員からの意見を出し合っています。
会合では、会場設営、機材の準備、会合の進行、写真撮影、レポート作成、パーティーの運営を担っています。
実行委員同士の交流も活発です。
大勢の人達の前で発表する経験ができます。
実行委員会の課題は委員の高齢化ですので、若手の参画を期待しています。

クラウドビジネスサロンに参加して(実行委員宮原)


クラウドビジネスサロンで弊社の取り組みを紹介しました。
出席された方々のお役に立てると思い、質問やご意見をいただけると気づきやヒントになるとともに、自社の取り組みを知っていただくことにより、会社同士の連携、協業の可能性を見つけられるかもしれないと考えたからです。
NCWGは、会合だけでなく部会にも参加すると、より多くの人との出会いや、ビジネスのヒントや、協業のチャンスを手に入れることができます。皆さんもご興味のある部会に参加されてはいかがでしょうか?

【13周年特別講演】

「量子コンピューティング分野の研究開発の現状と今度」

慶応義塾大学 理工学部物理情報工学科准教授

QuanmaticCTO

量子フォーラム技術担当理事(業務執行理事)

田中 宗 氏

はじめまして。最近、量子フォーラムにて技術担当理事を担当したご縁で、本日の機会をいただきました。よろしくお願いします。

本日は、量子コンピューティング分野の研究開発の現状と今後ということで、今、量子コンピューティングの分野が話題になってることは皆さんご存知だと思います。

ただ、様々な情報があって捉えどころが難しい面もありますので、本日は専門的なところというよりもわかりやすく触れていきたいと思います。

■自己紹介

慶應義塾大学 理工学部物理情報工学科に勤務。

大学で量子コンピューティング技術、量子技術に注力中。

2つの事例

・2022年 ヒト生物学 微生物叢 量子計算研究センター立ち上げ(私立大学として初めて採択されたWPIプロジェクト)

・2024年 サスティナブル量子AI研究センター立ち上げ

学生時代、東京工業大学(現東京科学大学)で、西森秀敏先生の研究室に在籍。

※西森先生は量子アニーリング方式を世界で初めて提唱した高名な方。

物理の他に科学や情報系にも携わったことで、量子コンピューティング技術を他の研究者とは違った観点で捉え、社会実装に近づける思考ができている。

また、量子フォーラム記事や、YouTube公式チャンネルで茂木健一郎先生と量子コンピューティングについて対談する活動も行っている。

量子コンピューティング技術を作る・伸ばす研究開発の他、トライアルの取り組みなど、様々なプロジェクトが走っており、それに参画している。

■量子技術とは

国内外問わず国家の重要戦略として量子戦略が位置づけられている。

世間のDXは待ったなしという状況だが、クオンタムトランスフォーメーション(QX)についても同様の状況。

ただし、量子コンピューティング分野の研究開発は順調に推進している。

特にここ数年のハードウェア進化は目覚ましいが、その一方でどのハードウェア方式が最も優れてるかは現段階ではまだ定まっていない。

ただ、この分野に関する日本の存在感は極めて高い状況なので、エコシステムをいち早く作っていく必要がある。

世界的に代表的な4つの技術

・量子通信

・量子コンピューティング

・量子センシング

・量子マテリアル

ここで一旦量子というキーワードを外すと、コンピューティング、センシング、通信、マテリアルとなるが、どれも現代の生活に欠かせないものである。

それに対して量子という形容詞をつけていくと何が起こるか?

そこが科学者としてのワクワク感と共に、社会実装を考えていく上でも極めて重要となる。

・量子コンピューティング

量子力学の法則を活用した新しいコンピューティングパラダイムとまとめることができ、特に特定のアプリケーションに大幅な性能向上をもたらす。

従来の古典コンピューティングと比較すると、新たな領域のコンピューティングを可能にする。※古典コンピューティングという言葉は物理の専門用語的に使用されている。

・量子センシング

様々な量の計測を提供するもので、特に従来のセンサーよりも桁違いに感度が高い。

量子システムに基づく次世代のセンサーを組むことで、様々な応用が期待されている。

量子センシングは、量子状態という非常にパワフルと同時に非常に脆い状態である。

この脆い状態は裏を返すと、少しの刺激で一気に壊れてしまうため極めて好感度に反応すると言える。

・量子通信

通信の転送や安全性を確保することができるとされる技術。

・量子マテリアル

次世代半導体の実現や、量子センシングの先進であったり、あるいはエネルギー変換貯蔵といった、グリーンイノベーションに期待されている。

■日本国内国外の量子戦略について

世界的に量子技術が注目されいる中での日本の量子戦略は「ニーズベース」。

令和2年 量子技術イノベーション戦略が掲げられる

令和4年 量子未来社会ビジョンが掲げられる。

令和5年 量子未来産業創出戦略が打ち立てられる。

令和12年目標 国内量子技術利用者1000万人、量子技術による生産額50兆円規模。、未来市場を切り拓く量子ユニコーンベンチャー企業を創出、という非常に高い目標が掲げられている。

 (内閣府の量子未来産業創出戦略概要から引用)

今までは量子技術そのものを作る事が研究トレンドだったが、最近は何かのものとクオンタムを結びつけるのが大事だと言われており、量子コンピューターやセキュリティネットワーク、センシングマテリアルに対して様々な取り組みがなされている。

一方、世界各国(欧州・北米・アジア・・イスラエル等)も量子技術に多くの投資をしている状況。

世界各国で量子コンピューターの技術として、クラウドサービス、ソフトウェア、ハードウェアに注力している。

その中で日本も存在感を出しているのが、この技術の特徴でもある。

■量子コンピューティング分野の研究開発

なぜ量子コンピューティング自体が注目されてるのか?

それは近い将来における危機が2つあるというのが前提になっている。

1点目は、コンピューターの性能成長が頭打ちになることが予測されている。

これまで言われてきたムーアの法則(約2年で約2倍成長)も、今後は成長鈍化が予想される。半導体の微細化限界と言われている自然界の限界に近づいている危機感がある。

2点目は、データ量の爆発的増加。これを危機と捉えるかチャンスと捉えるかの考え方もあるが、データ量が非常に増えている。

これはセンシング技術が非常に高まったり、DXなどの技術的に変化したり、様々な状況の変化でデータ量が爆発的に増加し、今まで今まで取れなかった分量のデータが生み出されており、今のままでは到底太刀打ちできなくなる。

その中で次世代アクセラレーターという考えのもと、1つは半導体技術の素朴な延長としてGPU・ASIC・FPGAがある。

別の見方では、情報処理とは何なのかを考えると、入力があってそれに対する操作があって最終的に出力が出るものとなる。

例:Googleマップで現在地と目的地を入力すると経路パターンが複数出てくる。

その際、地図アプリの中では緯度経路情報、道路情報、公共交通機関情報が次々と読み込まれていく。

この様にコンピューティングはいくつか工程があり、それぞれの工程を順々に処理していく。

何かを入力をしたら何か答えが出てくるというのは、日頃から経験しているが、中には結構計算が長くかかる副プログラムも存在するので、それ圧倒的に短くすることできればすぐに答えが出てくる。その計算時間を短縮するのに量子コンピューターをうまく差し込むことができれば良い。

■量子コンピューティングの分類(様々な分類方法がある)

主な分類としてはこの2つ。

・ゲート方式

「究極の量子コンピュータ」の手前の量子コンピュータ。

以前、暗号解読などのSFじみた話があったが、その時から提案されている伝統的な方法。、実は暗号解読といった野蛮な応用ではなく、例えば化合物計算というそれまでは机上の空論とされていた分野が現実味を帯びてきた。

・アニーリング方式(イジング方式)

 最適化計算を行うもの。

今までは学術的で物理学の特別分野とされていたが例えばAmazon Braketなどクラウドサービスでお金を払えば量子コンピューターが使える時代になった。

それにより量子コンピューターに対する経験を積もうという若い人達も出てくる時代になった。

その中で、私はどういう研究を行うべきかというところで慶應義塾大学に2020年に着任した。

その時に自分の持ち味を生かして研究室を作るとした時に、量子コンピューティング技術はコンピューターなのでハードウェア研究も大事だが、私自身はハードウェアを作れないので、ハードを作れる人たちと手を組んで新しいコンピュータの形を作る研究を行った。

これがハードウェア開発の基礎となり、またソフトウェア開発の基礎やアルゴリズム開発は、今は量子コンピューターがお試しできる状態なので、コンピューターをどう動作させればパフォーマンスを最大限発揮できるかを試す、そういった取り組みを行っている。

今の量子コンピューティング、あるいは数年後に確実に来る量子コンピューターで何ができるのかを探る、こういう取り組みを様々な企業の皆様と一緒に取り組んでいる。

■量子コンピューターのハードウェア開発競争

D-Waveシステムズという会社は、量子アニーリングマシンを2011年に世界で初めて商用化している。そこで掲げられているロードマップは、だいたい2年で倍ぐらい成長とされている。

先ほどムーアの法則を出したが、ある意味量子アニーリング版ムーアの法則だとD-Waveは言っている。

ゲート式量子コンピューターのロードマップ

量子ビット数という観点ではIBMがかなり進んでいる。

IBM Quantumでもロードマップを掲げており、着実に進化させていくと宣言して実装してきている。

量子コンピュータハードウェア開発に参入する企業

国内外様々な企業が参入を行っている。

量子ゲート方式の実現手法が続々提案中、超電導やイオントラップに加え、2022年は冷却原子、フォトニクスの開発に注目。

今、ハードウェア開発において、様々なところがいろんな方法で作っているが、どの方法にもメリット、デメリットがある。

アメリカ企業がたくさん参入しているが、日本で取り組みはしっかりと行われている。

理化学研究所では国産量子コンピューター初号機として「叡」という量子コンピューターが稼働した。

また、分子化学研究所の大森先生グループの技術をもとに、スタートアップを事業化に向けた連携を進めいく中性原子方式があったり、日本の会社ではないが、Queraという会社もまた中性原子方式は産業技術総合研究所のABCIとつなげる事が決定している。

ハードウェア実現の方法とそのメリット・デメリット

・人工的に量子ビットを実現:超電導・半導体(シリコン) 

・自然に存在する物理系を用いて量子ビットを実現:イオントラップ・中性原子・光

どの方法が一概に良いか悪いかは言えず、家電製品のように後から出てきた技術が優れているわけでもない。

ただ、そういった誤解は結構多かった。例えばゲート方式というのが1990年代から出てきたが、1998年にアニーリング方式が提案されたが、この新しい量子コンピューティング方式は、ゲート方式でできないことを実現できるという風に考える人もいた。

でも、そうではなく、次世代技術だっとしても新しく出たから必ずしも良いという事ではないということを抑え、今後何々方式が出てきたとしても、過去にあったものが全部ダメになる訳ではなく、それぞれの方式で競争しあっている。

■量子コンピュータのソフトウェア開発競争

「量子アニーリングマシンで一度で処理できない場合に対するアルゴリズム」

私が元々いた早稲田大学で様々なアルゴリズムの提案がなされている。

一言で言うと、量子アニーリングマシンで一度で処理できない場合に対するアルゴリズムという考え方。

我々は計算する時に計算機にデータを入力するが、入力するデータの容量が決まっている。しかし、このデータ容量よりもはるか大きいものを解きたい、問題が大きかった場合にどのようにするか?ということを早稲田大学で取り組んでる。

また、私どもの研究室では量子コンピューティングとAIを組み合わせたアルゴリズムというものを開発している。これがFactorization Machine with Annealingという専門用語がある我々が作った方法。量子コンピューティングとAIとそして実験を組み合わせるということ。例えば、効率よく電流が流れる材料を作りたいという時に、いろいろな混ぜ合わせを行いって電流値を測る。するとあまりうまくいかなかったので次にこれをやってみよう、作って測る作って測る繰り返す。この試行錯誤をできる限り減らす、そういうことができる方法だと考えられている。

この試行錯誤が必要そうな問題で、いろいろな業種の方に興味をもらい、いくつかの課題について実際に解く。こういった技術を広めていきたいというふうに思っている。

機械学習と量子最適化の融合

量子リーディングマシンとAIとシミュレーションを融合することで、AIだけでは解くのが難しかった、量子コンピューターだけでは解くことができなかったという問題に対し、この方法は有効であるといえる。

これは、従来の機械学習でもできはするが、我々の方法を使うと、だいたい計算時間として約1桁ぐらいの速度向上が見えてくる。1桁は例えば1ヶ月かかるところが1日で済む。あるいは1年かかるものが1ヶ月で済むという感覚。なんらかの工業製品を作ろうと思った時に、この1桁というのは非常に大きいものだということがご理解いただけると思う。

■量コンピュータユースケース開発競争

「産学共同研究で進めている量子アニーリング応用探索研究」

・従業員シフト計画問題

・マルチモーダル交通最適化

・広告配信最適化

こういった応用探索研究がリアル現場で出てきている。

一例としてベルメゾンロジスコでmagiQannealというシフト表作成ソフトを導入し、実際に実運用されて横展開をする。別の企業でも使用できるサービスになったこともある。

また、ローム社と私がCTOを務めるQuanmatic社で、半導体の製造工程、最適化の実証を行い、2024年4月に本格導入を目指すとしてプレスリリースされた。

ただ、これがあちこちで起こっている訳ではなく、ごく少数の例が出始めている状況。

Factorization Machine with Quantum Annealing(FMQA)の応用

メタマテリアル、フォトニック結晶レーザー、発光材料、スピントロニクス材料への応用がアカデミックレベルでは見えてきている。

■量子未来社会へ

「量子未来社会を創造するために必須のエコシステム」

社会変革を目指す皆が量子技術が拓く未来像を描、エコシステムを形成する必要がある。

学術研究から生まれた最先端技術を真の意味での実用化・商用化へ舵を切るためには、大学、研究所などが大事。それだけではなく、企業、あるいは国家地方自治体、日本の総力戦というような考え方が極めて大事。国外との戦略的な連携(なんでも連携すればよいというわけではない)が、必須である。

その中で、量子コンピューター技術業界のエコシステム形成として様々な公的なところが特に人材育成に力を入れている。

例:NICTにてNICT Quantum CAMPの実施。

IPAの未踏ターゲット事業プロジェクトの立ち上げ。

そこからこのQUANTATTACKというテトリスのような、量子ゲート方式の知識があると、高得点が取れるようなゲームの作成などの取り組みも出ている。

量子コンピュータ技術業界のエコシステム形成

量子コンピューター、量子技術、コンピュータ技術に限らず、エコシステムを作りだす観点で一般社団法人量子フォーラムを立ち上げている。

量子フォーラムの良さは、特にアカデミック業界の人と産業界の人が密になりやすい仕掛け作りをしている。

私は、量子コンピューター技術推進委員会の委員長として私活動しており、さらにこれを発展させ、量子フォーラムを通じてそれほど馴染みがなかった方も量子技術に親しんでいただき、何らかの社会実装、そして市場を作る仲間作りをしていきたいと思っている。

量子フォーラムのウェブサイトには、佐々木委員長、東大理系中村先生(超伝導量子ビットを世界で初めて作った方)、IBMの小野寺さんなど様々な方がいる。

また、若手インタビューという企画で量子人材の若手が頑張っている様子を発信し、若者が入ってきているというところが非常に大事ですが、その若い人が量子技術というものを通じてどう社会実装していくかの取り組みも垣間見ることができる。ぜひ、量子フォーラムのウェブサイトをご覧いただき興味を持っていただければと思います。

DX人材→QX人材

なぜエコシステムを取り上げたのかは、おそらく多くの企業勤めの方は、例えばソフトウェア開発人材育成をする、あるいはゲームができてくると、それが社会実装にどう近づいていくのかと疑問に思うことも多々あると思う。その時に考えてみると、今の時代にはどういった人材が必要なのか?と率直に全てを理解してるわけではないが、ただ、今の時代はDX人材を作っていくことに対して、様々な企業が取り組み成功を収めてきていると思う。

そのDX人材を育成する、あるいは作っていく、採用する、そういったことをQXに横展開していくことをまずは行えばよいのではないかと思っている。

旧量子と言うと、神秘的で魅力的ですごそうと思われるが、例えば量子コンピューターそのものを取ってしまえば、何か計算するただのコンピューターという観点から言うと、DXでやってることと大差ないと思ってもらいたい。

まずはDXからQXにするには、横展開するにはどうしたらいいかを作っていくのが大事。

学びのサイクルはDXに対しては議論が整理されてきているが、DX人材育成方法の横展開をすることで、QX人材育成がスケールするのではと仮説を持っている。

やはり大学や研究所、そして一部のコアな方が取り組んでいるだけではダメで、2030年の大目標に対して取り組むには、日本の総力戦で取り組む必要があると思っている。

一緒に取り組んでいる住友商事のQXウェブサイトから引用

DX to QX、量子未来社会の創造

つまり量子未来社会へという想像ですが、連続的な事業変化と非連続な未来創生、この2つのレイヤーに分かれる。

連続的な事業進化は、着実に量子を染み込ませるために重要。

今の事業に量子が入り込む余地はないかという観点でも見ていくが、それだけではそれこそ量子技術による生産額の規模や、ユニコーンスタートアップなどだけでは夢物語で終わってしまう。

そうならないためには、「こういうことができたらいいな」という考え方を持って、今までは考えもよらなかったことを量子でやってみるというイノベイティブな考え方が大事。バックキャスト、フォアキャストも共に大事である。

特に量子は最先端の部分ばかり考えると難しいものになってしまい、直近のことばかりだと既に実現できていて、それでは両者はスケールしないので、いろいろなレイヤーで取り組むのが良いと考えている。

■まとめ

量子技術として代表的なものは幾つかのものがある。

繰り返しになるが、国家の重要戦略として今世界的に量子戦略というものが位置づけられており、QXへの歩みはもう待ったなしである。

さらに、量子コンピューティング分野の研究開発は順調に進捗しており、これまでソフトウェア開発が多かったが、最近はハードウェアの進化が非常に目覚ましくなっている。

ただ、どのハードウェアが最も優れているかは現段階では不明。

量子コンピューティングの応用に関しては、日本の存在感は極めて高い。それは、日本の研究開発の強み、応用を考えているところだと私は確信をしている。そこをさらに伸ばしていくというのが良い。

量子未来社会を想像するために研究クラスターの人だけが取り組んでいるだけでは絶対ダメで、様々な人を巻き込んでやる必要がある。

さらにQXは時代を先取り、まさに一丁目一番地である。

この量子という技術次々と出てきている観点から、これを通じて時代の変化を先取るのが大事ではないかと考えている。

以上、ありがとうございました。

【閉会の挨拶】

副会長 野元恒志

田中先生、本当に貴重な話をありがとうございました。

ハードウェア方式は沢山あるがまだ優劣がついていないこと、特に量子コンピュータは一企業がおいそれと買えるものでもないので、ソフトウェア分野、DX・QX人材へというお話と、日本の総力戦というお話がとても印象的でした。

産学官の連動は、自ら行なっている事業体に置き換えて見ると、なかなか量子を活用して何かをするきっかけを持ちづらいので、この様な場や、NCWGの研究部会で技術的な連動を検討したり、量子コンピュータはプログラミングの考え方も変えていく必要があるので、考えるところが非常に多く、非常にためになるお話でした。

本日は、第13期の報告会と第14期の計画発表、特別公演というプログラムでした。

今日は14期の決起集会のようなものです。

その中で量子コンピュータというとても良いお話をいただいています。

小堀会長も冒頭で報告と計画を発表した通り、参加ではなく参画ということで、本日登壇した方々が部会や実行委員会についてご説明しましたが、それらに参画していただくことでチャンスも増えると思います。

サムライクラウド部会も難しい話をしていますが、参画いただくうちにわかるようになってきたりします。

新しい気持ちで14年目スタートしていきますので、この後の懇親会で大いに交流していただき、14期のNCWGではこういう参画をしていきたい、といったことを語っていただきたいと思います。

【パーティー兼大忘年会】

サムライクラウドサポーターや、関係団体の皆様から祝辞を頂き、またプレゼント抽選会とたくさんの参加者の皆さんで大いに盛り上がりました。

【NCWG実行委員 報告書作成者】
宮原 哲也(株式会社アルティネット)
放生 浩一(株式会社ドヴァ)


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